理化学研究所のグループが、ヒト羊膜を利用し、
ES細胞から神経細胞の産生に成功、臨床応用へ扉を開く
理化学研究所発生・再生科学総合研究センター細胞分化・器官発生研究グループ(笹井芳樹グループディレクター)らの研究チームは、国立長寿医療研究センター病院らと共同で、ヒト羊膜由来の細胞外マトリックスを細胞培養に利用して、ヒトES細胞から高効率で神経細胞を分化誘導させることに成功しました。
「AMED法」と名付けられたこの方法では、羊膜から薬剤処理によって細胞成分を除去した“羊膜マトリックス”上に、ヒトES細胞を播き、特殊な無血清培養液で培養します。すると、ES細胞は盛んに増殖し、90%以上の高い効率で神経前駆細胞に分化誘導されることが明かとなりました。ヒトES細胞が羊膜と接着するのを助けるために、ラミニンというタンパク質を添加することがポイントです。
これは、ヒト羊膜成分が、ES細胞に対して分化誘導活性、増殖支持活性を有することをはじめて示した報告であり、また、ヒトES細胞からこれほど高効率に神経細胞の分化誘導に成功したことも世界初の快挙といえます。
これまでに、笹井グループディレクターらは、PA6細胞というマウス骨髄由来の細胞をフィーダー細胞として共培養することで、ES細胞から神経細胞への分化を選択的に誘導できる方法の開発に成功していました。しかし、この方法では培養中に動物由来のPA6細胞を共存させる必要があり、動物由来の病原体の感染などのリスクがあるため、この方法で産生した神経細胞を移植医療へと応用するには大きな問題がありました。ヒト羊膜は、外科的処置など臨床の現場で実際に用いられており、すでに安全性が実証されていることから、今回の発見はヒトES細胞を用いた再生医療の実用化に大きな可能性をもたらす結果であると言えます。
同グループでは、すでにサルES細胞から分化させたドーパミン神経細胞をパーキンソン病モデルのサルの大脳基底核に移植し、治療効果があることを実証しています。
また、「AMED法」を用いることによって、神経細胞以外にも、網膜色素上皮、水晶体組織への分化誘導に成功しており、今後の幅広い医療応用が期待されます。
|